「狭小地」といわれるだけで快適な住空間の確保はできないと思われがちかもしれません。しかし空間の使い方によっては一般の住宅よりも快適な空間が生まれたりするもの。ただ広いだけよりは、限られた空間を活用した楽しい仕掛けや新しい視点など、条件があるからこそ生まれるのは敷地をフル活用したアイデア空間。そこで今回ご紹介したいのは狭小地に建つ山を望む空間のフル活用がかなった住まい。一級建築士事務所(株)アトリエカーサが手掛けたこちらの住まいは狭小地の持つ厳しい条件のなか、可能な限りの広がりある空間を目指したものでした。二階に配置されたリビングからは地元の山並み「手稲山」を望む気持ちの良い風景が楽しめます。
敷地があるのは北海道札幌市内。角地に建つのは木目の外壁が柔らかな本住宅です。家をぐるりと包む木外壁は雪の積もる建物の表情を温かな雰囲気をかんじとることができます。見た目にはナチュラルなファサードに控えめな開口。近隣との距離も近いことからプライバシー性の高い外観です。山を望む開口があるのかは外観から察することは難しいかもしれませんが、室内とのコントラストを生む仕掛けになるのかもしれませんね。
二階リビングのハイサイドライト。外観からは想像できなかった気持ちのいい「手稲山」を望む広がりを感じる景色です。比較的閉鎖的な外観にも関わらず、空間全体に光を感じることが可能になるのは、こうした効果的な開口のためでしょうか。開口の手前は人が通れるほどのスペースに。景色だけではなく、日の移ろいから自然を身近に感じることもできます。
室内は柔らかな木目とホワイトカラーでまとめるインテリアはナチュラルシンプルといった落ち着きのある雰囲気です。キッチン・ダイニング・リビングには空間全体をぐるりと一望できてしまうロフトを。空間にダイナミック感を感じることのできる高天井は狭小の住空間とは思えないほど開放的な空間です。もちろん家族とのコミュニケーション、気配を感じることも可能な賑やかな住空間に。
個室にはちょっぴり個性的なクローゼットが。確かに、クローゼットを部屋の一面に設けてしまうとその面からの採光は望めませんが、一工夫するだけで、クローゼットも採光も確保してしまう仕掛け。空間に十分な明るさだけでなく、その隙間程の空間を活用するのは住み手次第。お気に入りの小物や観葉植物、ちょっと魅せたい趣味のものやプラモデルなど、ベースがシンプルだからこそ自分なりのインテリアへと変えていくことができそうですよね。